筋の話(アウターマッスル)

 
筋線維(骨格筋線維)にはザッと分けて2種類のタイプがあり、それぞれ組成と能力が異なっています。
1つ目は速筋線維、2つ目は遅筋線維。
(この間の中間筋線維は省くとして ・・・・・・・・・ )
 
で、浅層筋(アウターマッスル)には速筋線維が多く、深層筋(インナーマッスル)には遅筋線維が多く見られます。
ここではそのうちの浅層筋(アウターマッスル)について。
 
浅層筋=表層筋と記述されることもありますが、深層筋との対比上、浅層筋の方が理解しやすいと思いますのでコレを使います。
  
ゴリマッチョ !!
見るからに逞しく、強そうです。
あの盛り上がった筋肉はスーパーマン、いや、文字通り筋肉マンのようです。
 
このビルト・アップされた筋が本日の主役である浅層筋(アウターマッスル)です。
 
 
とりあえず、浅層筋(アウターマッスル)の主成分である速筋線維の一般的な特性を挙げれば、

 

  • 長所
    • 収縮反応が速い
    • 収縮力が強い
  • 短所

 

筋の作用には「体を(特に内臓を)守るヨロイの役目」があります。
突発的に発生した事故や外部からの攻撃に対する最後の防御は筋が受け持っているのですね。
それこそ「身を呈して」大事なものを守るのです。
「弁慶の仁王立ち」のように。
従って、いかに速く・強く収縮するかが大きなポイントとなっています。
同時に、危機回避は一発勝負的なものですから、全エネルギーを瞬間に爆発させる為に疲労しやすい。
エネルギーを温存したって命が無くなれば何にもならないですから。
 
 
私が考えている浅層筋(アウターマッスル)の運動生理学的特性について。
 
筋が行う運動は
    1.前後運動=屈曲-伸展(矢状面での運動)
    2.左右運動=外転-内転(前額面での運動)
    3.回す運動=外旋-内旋(水平面での運動)
が基本となっています。
 
これを連動的に行うことでスムーズな動作が行われるのです。
 
そのうち、浅層筋(アウターマッスル)が受け持つのは屈曲-伸展、外転-内転となります。

浅層筋(アウターマッスル)の連動は筋力が大きくなればなるほど前後運動の屈伸のみで行われるのが大きな特徴です。
矢状面と前額面での連動運動も起こりづらくなる。
ましてや、水平面との連動は問題外のようです。
 
ついでに言えば、カニ以外(?)は前後(屈曲-伸展)が主運動となります。
 
で、
 
陸上競技で例えてみると ・・・・・・・・・
 
50M走、100M走は直線距離となり、200M走は直線80M+カーブ120Mと決められています。
浅層筋(アウターマッスル)のみで50M走は初速勝負、100M走は初速と加速の勝負、
それ以上では深層筋(インナーマッスル)が加わり、持久力も大きな要素となって来ます。
下肢だけでなく、上肢も矢状面での運動のみ行うのが理想的である為、腕を矢状面からはずすにつれて遅くなるでしょう。
同時に、体幹の回旋(水平面での動き)も浅層筋(アウターマッスル)がピークに近づくにつれ起こりにくくなる筈です。
したがって、首や腰を回旋させたランニングでは最高の結果を出しにくいのではと思えます。
むしろ、体幹を矢状面(前後)に連動させた方が効率的となります。
チータやヒョウなんかの走り方を想像して見て下さい。
逆に、ゴール時点では浅層筋(アウターマッスル)のブレーキとしてそういった回旋動作を見ることが多いですね。
首を左右に振ったり回したり、腰を捻ったり。
回旋動作を増やすことにより運動軸をシフトチェンジして行き、連動しにくい浅層筋(アウターマッスル)が制動されるのです。
 
 
重量挙げで例えてみると ・・・・・・・・・
 
バーベルを直線距離で持ち上げ、その時にいかにバランスを保ちつつ全筋力を開放出来るか。
体がブレた場合にはそのブレが前後もしくは左右のいずれかのブレでないといけない。
前後左右が連動するブレには対応出来ないし、対応しようとすれば浅層筋(アウターマッスル)が100%発揮出来なくなる。
さらに、初動時にどれだけ速く大きなパワーを出せるかも勝負の分かれ目になります。
重いバーベルに垂直上の加速度をどれだけ加えられるか。
加速度が最大に乗った時点で「引き上げ」から「持ち上げ」に移行するため、バーベルを「指部」から「手掌部」に移動させる。
ここでは微妙な持ち替えのための連動は無く、別個の運動をいかに瞬時につなげられるかがポイントでしょう。
「引き上げ」では前腕筋群の、「持ち上げ」では上腕筋群の浅層筋(アウターマッスル)が中心に働くからです。
 
 
以上のように、浅層筋(アウターマッスル)は速筋線維が中心となって働き、火薬のような爆発(収縮速度と収縮力)を行うというわけです。