膝窩筋って

今日は膝の裏側にある「膝窩筋」について書いてみます。

どういう筋かというと、

(1)起始
・大腿骨の外側上顆、LCMおよび膝関節包から強い腱として起こる。
(2)停止
・脛骨後面の内側上部(関節腔を貫く)でヒラメ筋線よりも上方に付く。
(3)支配神経
・坐骨神経(脛骨神経)
(4)隣接組織
・厚い筋膜組織に覆われる。この筋膜は半膜様筋腱にもつながる。さらに腓腹筋外側頭に覆われ、遠位では ヒラメ筋と接する。
・外側で膝窩動脈、坐骨神経と接する。
(5)補足
・膝窩筋腱は弓状靭帯、膝窩腓骨靭帯、ファベラ腓骨靭帯に覆われ、大腿二頭筋腱、LCMの下を通り膝関節包内に入る。
・外側半月の後外側部を走行し、外側半月と一部連結する。
(6)機能解剖
・下腿の屈曲と屈曲し始めの内旋に作用する。
・外側半月を後方に牽引する。
・膝関節唯一の単関節筋。
・下腿近位端付近の深層でヒラメ筋の内側近位縁のすぐ頭方に存在する三角形の筋である。
(7)その他
・膝の後外側支持機構の安定性に重要な筋。
・膝窩筋腱は外側半月中節と後節の移行部に存在する膝窩筋腱溝を後下方から前上方へ走行する。
・外側半月板は膝窩筋腱溝で関節包から遊離する。
大腿二頭筋、大内転筋、長指屈筋、ヒラメ筋、足底筋と筋連結をする。

であり、その小ささゆえに「屈曲・内旋の補助筋」として扱われているようです。
 
でも本当にそれだけのために存在している筋なのでしょうか?
 
ここで膝の機能を解剖学的に考えてみました。

大腿骨と脛骨の解剖学的形態により脛骨は大腿骨に対してやや(5〜10度)外旋しています。
大腿骨両顆部の非対称性やらなんやらで脛骨は屈曲時に(大腿骨に対して)自動内旋を行います。
この時、地面に足が固定されていれば大腿骨軸が相対的に自動外旋となります。
 
しゃがむ時、固定された膝から下と上半身の連動をスムーズに連携する働きを大腿骨の動きが行っているなんて、スゴイですね。
 
大腿骨および股関節があんなに複雑なのもそのあたりが関係しているんでしょうね。この辺のことは機会があれば書き込みたいと思います。

で、伸展時はその逆。

脛骨内旋のコントロール大腿二頭筋・半膜様筋・大腿筋膜張筋により安定化され、大腿骨には作用する筋が存在していません。
脛骨外旋のコントロール大腿四頭筋により制御され、大腿骨での膝窩筋や脛骨でのハムストリングは外旋位での膝のロックに関与しています。

ここまでは医学書などにより報告されてきたことばかりですがここからちょっと雑談を。

歩行時、立脚期を考えれば支持脚の膝は伸展位となります。
歩幅を大きくしたり、同じ歩幅でも速度を上げようとするほど膝関節は過伸展状態に近づくでしょう。
つま先に体重移動が行われるとともににより重心が前方移動し、運動効率が上がることになります。

この時、膝の過伸展を抑制するのは何か?

基本的に伸展時には膝はロックされているためにその安定性は確保されています。
しかし、歩行を連続する時には[伸展]→[屈曲]リズムをスムーズに行うための機構が必要となります。

ここで膝窩筋が登場 !

つまり、最初に言った条件での立脚期には
[着地] → [伸展] → [過伸展方向への動き] → [過伸展方向への動き抑制=屈曲への助走] → [屈曲] → [遊脚期]

で、

この「過伸展方向への動き抑制=屈曲への助走」の大役を担っているのが「膝窩筋」なのではないか?と考えています。

臨床では、歩くと膝の裏あたりが痛い。もしくは膝の中側で痛む。ゆっくり膝を伸ばしたら何ともないのに勢いよく膝を伸ばすと痛い。などと言った患者さんの全ては膝窩筋の治療で改善されています。

また、転倒により膝を捻った後遺症として膝全体が痛重く、水腫がある患者さん(整形で抜いてもらったけれどもすぐに溜まってきたもの)に対して膝窩筋治療を行った結果、水腫が半減してきました。これには他の要素もあるかもしれませんが、自覚症状も好転してきたことからなかなか面白い臨床例だと思われませんか?