筋の話(インナーマッスル)

 
深層筋(インナーマッスル)とは?
これは実に興味深く、おもしろい機能を持つ筋だと思います。
 
体表面からは窺い知ることは出来ないが非常に重要な骨格筋。
 
いくら鍛えてもゴツくならない。
鍛え上げれば細マッチョ。
 
今まで気づかれなかったその機能。
 
深層筋(インナーマッスル)は遅筋線維が主体となっていますが、その特性は ・・・・・・・・・
 
-長所
--持続力がある
-短所
--収縮反応が遅い
--収縮力が弱い
 
表層筋(アウターマッスル)と比較すればただ単に持続力があるだけのように思えます。
 
持久力を優先した代償に機動力を低下させたもの?
確かに、重力場での姿勢保持に関わる抗重力筋と同時に関節安定性を担保する深層筋(インナーマッスル)は持久力を要求されるのですが、それだけが特性でしょうか?

 
動物の動きは前後運動=屈伸運動(矢状面での運動)が主体となり、表層筋(アウターマッスル)がそれを行う。
しかし、他の運動との連動は抑制される。 
ただし、これは緊急時の動作であり、通常は不定な速度と不定な方向の連動の繰り返しとなります。
ここで、深層筋(インナーマッスル)が常に関与して来る。
 
 

さてここで次のような問いかけをしてみました。
「解剖学書に書かれている筋の作用は正しいのか?」
私の答えは
「一部しか書かれていない。重要なことが抜け落ちている。」
です。
骨格筋の作用には「個別の機能的作用」とともに「他筋との関係性」が重要な要素として考えられます。
 
浅層筋(アウターマッスル)は単一方向の運動しか出来ないことは前に書いた通りですが、それでは連動性が生まれない。

たとえ連動できても力・方向・スピードなどの微調整が即時対応しにくい。
 
そこに登場するのが深層筋(インナーマッスル)なのです。
 
自動車を例にすると ・・・・・・・・・
ロー、セカンド、トップと切り替えるのですが、シフトチェンジの際にはクラッチを使います。
このクラッチの役目を果たしているのが深層筋(インナーマッスル)。
自動車ではニュートラルを介する為に一時的ではあっても加速力ゼロの場合が生まれますが、筋の場合には深層筋(インナーマッスル)自体の機能により運動が持続しつつ方向転換が出来るのがスバラシイ !!
 
個性豊かな表層筋(アウターマッスル)は陽極なので協調出来ない。
ここに、陰極の深層筋(インナーマッスル)が登場することで陽極同士が連携出来る。
 
             
 
とつなぎ、必要なもののみジョイントさせる。
ただし、常に深層筋(インナーマッスル)に負担をかけていたり不自然なジョイントをさせようとするとその部が損傷を起こす。
これがインナーマッスル障害です。
 
 
また、同じ作用をする筋であってもわずかな方向性の違いや作用点の違いがあり、それらを微妙にコントロールするのも深層筋(インナーマッスル)の働きによるものではと推測出来ます。
 
まるで指揮者のように ・・・・・・・・・
 
 
ところで、深層筋(インナーマッスル)というのは単独名の筋だけでは無く、表層筋(アウターマッスル)の深層線維群もそれに当てはまります。
したがって、深層筋(インナーマッスル)の深層部はより遅筋線維が多くなっています。 
 

 
特に、回旋筋は単一運動方向では無く常に自由度の高い運動方向性を有している為、あらゆる筋のポテンシャルを同時に引き出すことが出来るのです。
 
ボクシングなどの格闘技で「ねじりを加える」とパワーが乗るというのもうなずけますよね。
また、太極拳の「等速度での円運動」が深層筋を使っているのも理解できるでしょう。
なかなか理にかなった運動。
結局、回旋運動をする筋のほとんどは深層筋(インナーマッスル)と言えるようです。
 
 
 
肘を曲げる動作を例にして浅層筋(アウターマッスル)のみの働きを考えてみると、
 
  1. 負荷をかけずに軽く少しだけ曲げる時 ・・・ 主動筋(浅層筋)の表層部または弾性力
  2. もう少し力を加えようとする時 ・・・・・・・・・・・ 主動筋(浅層筋)全体
  3. 中程度以上の負荷をかける時 ・・・・・・・・・・ 主動筋(浅層筋)+ 共同筋(浅層筋
  4. もっと負荷がかかる時 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 主動筋(浅層筋)+ 共同筋(浅層筋)+ 拮抗筋(浅層筋
 
となりますが、ここで深層筋(インナーマッスルを参加させると、
 
  1. 負荷をかけずに軽く少しだけ曲げる時 ・・・ 主動筋(浅層筋)の表層部または弾性力
  2. もう少し力を加えようとする時 ・・・・・・・・・・・ 主動筋(浅層筋)全体
  3.     ↓          ・・・・・・・・・・・・・・・ 主動筋(浅層筋)+ 主動筋(深層筋)
  4. 中程度以上の負荷をかける時 ・・・・・・・・・・ 主動筋(浅層筋深層筋)+ 共同筋(浅層筋
  5.     ↓       ・・・・・・・・・・・・・・・ 主動筋(浅層筋深層筋)+ 共同筋(浅層筋深層筋)  
  6. もっと負荷がかかる時 ・・・・・・・・・・・・ 主動筋(浅層筋深層筋)+ 共同筋(浅層筋深層筋)+ 拮抗筋(浅層筋
  7. 限界値直前 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 主動筋(浅層筋深層筋)+ 共同筋(浅層筋深層筋)+ 拮抗筋(浅層筋深層筋)
    
となるでしょう。
 
 
深層筋(インナーマッスル)が加わることで共同筋や拮抗筋のパワーが効率的に引き出せ、スムーズな連動を見ることが出来ます。
 
姿勢が悪かったり、意識的に無理な方向への運動を強制すれば深層筋(インナーマッスル)の働きが得られず結果的に充分な筋力を出せないか、ギクシャクした動きになるか、筋損傷を起こすかにつながることになると私は考えています。