ストレッチについて (part1)

 
一般的にストレッチとは体のある筋肉(骨格筋)を引っ張って伸ばすことを言い、筋の柔軟性を高め関節可動域を広げることが目的となっています。

その効果については ・・・・・・・・・
     1.筋肉ならびに結合組織の柔軟性の改善
     2.筋肉の緊張緩和
     3.血流改善
     4.神経機能の向上
などなど。

で、結果的に身体パフォーマンスの改善、障害予防などのメリットをもたらす・・・・・・・ ということです。

ここから生理学的に!
                                    
筋の仕事は収縮することですが、「求心性収縮」時に最も効率的な筋の状態を考えて見ると、

筋の最大張力 = 最大収縮力 + 最大弾性力    
   最大収縮力 = 静止長で発生 
   最大弾性力 = 静止長 × 120%で発生

ここで、静止長って実際にはどんな長さでしょうか?

実は、普段なにげなくとっているチョッと楽なポーズ。

そうです。

膝や肘、指などで少し曲げているようなスタイル。

静止長とは軽度屈曲位で得られ、静止長 × 120%とはそれよりも少し筋を伸ばした感じ。

例えば、肘の静止長を考えてみると、上腕二頭筋は180度伸展位よりも短く、上腕三頭筋は逆に長くなっているのが分かります。
つまり、180度伸展位では屈筋は静止長よりも長く、伸筋は静止長よりも短い。
どーでもいいような事実ですが面白く感じませんか?

ところで、ここでいう軽度屈曲位とは結構ファジーな範囲を示しています。
「軽度屈曲位=静止長ポジション」は「ココだっ!!」というものではなく遊びがある。
これは同一筋であっても筋線維の長さがバラバラなためであり、このことには当然のごとく必然性があるのです。

さまざまなポジションや力を加える方向にかかわらず一定のトルクを生み出すためには、静止長に一定幅の余裕を持たせることが必要であり、有効範囲内の筋線維群による最大収縮力と最大弾性力により最大張力を合成し、さらにギアーを入れ替えるようにシフトアップ出来る仕組みになっていると考えられます。

もしも静止長幅に余裕が無ければ、一定のポジション範囲以外では最大張力を得にくくなるということになります。
ごく限られた範囲内でしか最大張力を得られないということは実に不都合なことになることが容易に想像できます。
なかなか理にかなっているのではないでしょうか。

ただし、一定以上の筋収縮時には拮抗筋および深層筋の働きが必要不可欠になっていることは言うまでもありませんが ・・・・・・・・・

つまり、

屈筋の静止長は軽度屈曲位の中でも最も屈曲させた位置で得られ、逆に伸筋の静止長はその範囲内で最も伸展させた位置で得られる。  
・・・・・・ で、結局、
軽度屈曲位が屈筋・伸筋の一番リラックスできるポジションではあるが、最大筋力を発するのはそれよりも屈筋は少し伸ばした位置で、伸筋は少し曲げた位置で、ということになります。

ところで ・・・・・・ 。
軽度屈曲位って、運動不足の人でも別にストレッチなしでも自然に保っていますよね。
よっぽど体が固い人や外傷後の固定などで拘縮などがあった場合のほかでは最大筋力発生のためのポジショニングは可能なはず。

では、なぜストレッチが重要なのか?
筋や腱・靭帯などを柔軟にするとはどういうことか?
筋の緊張緩和とはどういうことか?

最大筋力を得るためには経度屈曲範囲内でこと足りるでしょうが、「ピーク」を得るためには「初動期」と「終動期」という「ゆとりの部分」が必要となってきます。
その上、「他筋との連動性と連続性」といった面から考えればそのつなぎとなるべき「バトンタッチの部分」が必要でしょう。

すなわち、最大筋力を得られる軽度屈曲位のみでは連続した運動能力は発揮できず、筋の柔軟性があればあるほどさまざまな条件変化に対応できることになり、これが運動能力アップとともに障害予防につながって来るのです。

「ゆとりの部分」「バトンタッチの部分」=「遊びの部分」であり、これをすばやく得るためにストレッチを行います。

また、生体機能のうちの「学習機能」というものも重要なポイントでしょう。
反復動作で常に良く使う組織は、反射反応速度が増えていく、これにより、一時的にスキルアップが見られるというスグレもの。

ようするに、筋の収縮・弛緩=クロスブリッジの結合・解除の反応を高めること。
同時に筋紡錘の反射(α−γ連関の反射スピード)を高めること。
また、腱に適正内限界値を与えることで腱紡錘の反射力を高めること。

これも筋や結合組織を柔軟にし、かつ関節を柔らかくして障害予防に役立つということにつながるのでしょう。

その他にも、筋と筋膜の癒着の剥離を改善することもストレッチが有効な理由の一つになります。

では、ストレッチはどうやったらいいのか?
 
次回はストレッチの方法について書いてみます。